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鹿住朗生監督インタビュー

『蒼天の拳 REGENESIS』キャラの死で紡がれる”伝承”…鹿住朗生監督が語る、本作の根源にあるテーマとは?

原作・堀江信彦×監督・鹿住朗生のインタビューでも語られた、主人公の死の物語。ではどうやって殺すのか?『蒼天の拳 REGENESIS』は、そんな重大な宿題を抱えて制作をスタートした。アニメはすでにシーズン1の半ばまで突入。原作の先にあるオリジナル展開を迎えようとしている。ここから少しずつ壮大な幕引きに向かって舵を切り始めたところだ。今回、鹿住朗生監督へのインタビューでは、ポリゴン・ピクチュアズにおける3DCGアニメーション制作の舞台裏を語っていただきつつ、今回のアニメで描かれるテーマに迫った。

 

■『蒼天の拳』は壮大なストーリーの奥に哲学がある

――前回のインタビューでも少しお聞きしましたが、まずは鹿住監督からあらためて『蒼天の拳 REGENESIS』アニメ化の経緯を教えてもらえますか?

鹿住朗生監督(以下、鹿住):
僕がオファーをいただいたのは、『山賊の娘ローニャ』がひと段落してTVシリーズ『亜人』の各話演出に参加したときだから、2015年2月中旬あたりです。
ポリゴン・ピクチュアズの齋藤秀行プロデューサーから「この先のスケジュール空いてる?」と聞かれまして。当時は『亜人』で頭がいっぱいだったから、「そう言われても……」と思いつつお話を聞いた覚えがあります(笑)。

――そこからプロットなどの制作をゼロから。

鹿住:
ええ。原作者のひとりである堀江(信彦)さんにお会いして、大まかなプロットをいただいて。その時点ですでにオリジナル部分を含めた物語の流れがあったものの、全24話でまとめるにはどうしても厳しいと思い、僕のほうで一度整理をさせてもらいました。
それを堀江さんに何度かプレゼンをして、決まったものをシリーズ構成の尾崎悟史さんと一緒に各話に振り分けながら、シナリオを設計していきました。

――『蒼天の拳』の原作を読まれたときの感想はいかがでしたか?

鹿住:
第一に感じたのは壮大なストーリーです。そして、仏教にも似た哲学的な思想が物語の根っこに横たわっていて、すごく深い世界観だなと思いました。
「どうしたらアニメ化できるか」という視点で原作を拝読していたのですが、『蒼天の拳』は読めば読むほど違う視点が出てくる。読み返すたびに新しい発見が見つかるぐらい多様性が広がっているので、アニメ化するにあたってどこに焦点を絞るのか、すごく難しいなと感じました。

 

■ CG業界でも独特なポリゴン・ピクチュアズの仕事術

――ちなみに鹿住監督から見たポリゴン・ピクチュアズってどんな会社ですか?

鹿住:
私も実写やアニメの作品でよく色々なCG制作会社さんとお仕事をしますが、その中でも特に独自性が強いスタジオだと思います。
「誰もやっていないことを圧倒的なクオリティで世界に向けて発信していく」というポリシーを持っていて、制作現場でもストーリー、キャラクター、デザイン、ひとつひとつに対して検証を重ねるスタイルを取っている。
たとえば演出が「こうしたい」と言えば、大概がそのとおりで進められるのですが、ポリゴン・ピクチュアズは「本当に整合性は取れているのか」「パフォーマンス性はあるのか」といった精査を行ったうえで採用していて。

――ポリゴン・ピクチュアズ流の仕事術ですね。実際にスタジオでの制作の進め方はいかがでしたか?

鹿住:
「こうしたい」と漠然と思っていたものをしっかりと吟味し、そのうえで絶対に欲しいものだったらちゃんとチームを説得する。価値観の違いを共有しながら、一緒にクオリティの高い作品を作ることができたのでよかったです。

――3DCGと原作との相性はいかがですか?

鹿住:
原先生の描くキャラクターは、すごく細かな線で構成されているんですよ。だからCGになったときに、どのバランスで統一させるかは、すごく悩みました。
ただ、3DCGと言ってもセルルック(※)なので、どこを省略して残すのか。CGなので情報量をたくさん詰め込むことはできますが、リアリティを求めれば実写でいいじゃん、という話にもなってくる。その線引きはしっかりと吟味しました。

注:セル画(2D)で制作されたアニメのような表現を実現する3DCGの手法

――具体的には?

鹿住:
たとえば「キャラクターにカメラが寄ったら顔にタッチを入れるけど、引いたときは皺みたいで邪魔になるからやめよう」とか「でもフルCGにしかできないことはどんどんやるべきだから、服の刺繍の細かさやディテール感はしっかりと再現しよう」など。そういった部分はセルルックとはいえ、しっかり見せたいと思いました。

 

■ これまでのエピソードの中に大きな伏線がある

――先ほどTVシリーズ『亜人』のタイトルを聞いて思い出したのですが、『蒼天の拳』は『亜人』と同じでモーション・キャプチャーを取り入れてますよね。

鹿住:
ええ。そういう意味では『亜人』に近い作り方になっていると思います。通常のアニメだと絵コンテを描いて進めるのですが、今回はストーリーリール(ラフを映像化したもの)を採用しました。
デジタル上にセット空間を作って、その中でキャラクターがどこから入ってどういう風になるか、カメラの配置も考えながら一回設計して、実際にモーション・キャプチャーで動きを撮ったら、そのデータを取り込んで……という。そのうえでひとつひとつの演出に対して、取捨選択を行っていった感じです。

――今回のアニメ制作の中で、特にこだわった部分はありますか?

鹿住:
もちろん色々なベクトルでこだわっていますが、強いて言えばキャラクターの「死に様」です。
すでに放送終了している第6話の流飛燕などもそうです。前回のインタビューでも話がありましたが、原作で描かれたキャラクターそれぞれにある「格」をどうやって守るか、という部分に大きく関わってくるのが「死に様」だと思うんです。
全24話という限られた枠の中で、すべてのエピソードをフォローすることはできなくても、そこだけはしっかりと描けたらと。キャラクターを単なるモブのように出して終わらせることだけはしたくない。原作を読んでいると、やっぱり深く描かないといけないなと思う部分がいっぱいありました。

実はこれまでに描かれたシーンの中で、あるキャラクターに関してすごく大きな伏線を張っています。とりあえず12話まで観ていただくと、なるほど!と思っていただけるようになっています。
Twitterなどの反応を見ても、こちらの狙い通りにミスリードできているので、、種明かしされたときの反応が密かな楽しみです(笑)。

――本作はアクションシーンにも注目ですが、必殺技名のカットインがシャキンと入ってて、すごく気持ち良いです。あの演出は今後も入る予定ですか?

鹿住:
そうですね。たとえば天斗聖陰拳という新しい拳法を描こうと思ったとき、漫画なら文字で伝えられても、映像では字面が分からないからイメージしづらいというデメリットがあって。だからちゃんと字で見せた方が良いのかなと思って取り入れてます。


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c原哲夫・武論尊/NSP 2001,c蒼天の拳 2018

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